問題5 システム開発事業者の責任について
年金記録問題検証委員会の最終報告書を一読して、ドキュメント管理の不備の事実より、システム開発事業者にも責任は免ないと表現にしていますが、本文には、
”コンピュータシステムの開発・運用については、長期間にわたり特定の開発事業者に依存してきたため、社会保険庁内部の人材育成が不十分であり、システムの仕様等に係る意思決定を業者に依存するものとなっている。
これが、社会保険庁自らがシステムの設計・評価・検証・改善を行う姿勢や意識を持つことができず、記録誤りの防止・減少のために必要な業務及びシステムの見直しの遅れにつながった。
また、契約関係では、ソフトウェアの著作権が、開発事業者に帰属し、実質的に同一の開発事業者しかプログラムの改修が行えず、固定的な関係が継続されてきた。
東京都三鷹市にある社会保険業務センターの記録管理部等は、システムの開発・運用を委託する開発事業者の建物の中に入っているが、平成16年度までは、明確な賃貸借契約が結ばれていなかった。
また、少なくとも厚生労働省及び社会保険庁の企画間相当職以上の者計10名がシステムの開発事業者及び関連会社にかつて再就職してきた事実があることは、国民の視点からは、依存関係の証左とみられよう。”
報告書でいう開発事業者は、NTTデータと日立製作所であり、特に、NTTデータは典型的なITゼネコン業者であり、ITゼネコンの実態をより具体的に記述すべきでしょうね。
報告書(第5 年金記録管理システムの調査結果)でも記述がありますが、契約問題は、平成15年12月19日に社会保険庁が社会保険オンラインシステム刷新可能性調査の要請した調査業者「アイ・ビー・エムビジネスコンサルティングサービス株式会社」の「社会保険オンラインシステム刷新可能性調査 報告書骨子(案)」に、既に報告されていました。
刷新可能性調査報告書骨子(案)には、運用コストの問題を指摘しております。
”Ⅲ-2.運用コストの課題
平成15 年度に支払った社会保険オンラインシステムの運用コストは、1,108 億円(消費税含む)である。運用コストを評価する観点から契約上ハードウェア費用及びソフトウェア費用(SE 費)に含まれるSI サービス費用をベンダーからの回答に基づき切り分けて評価した。
Ø ハードウェア費用(ソフトウェアプロダクト使用料及び保守費を含む)
・センター設備 : 417.0 億円
・端末設備 : 142.6 億円
Ø ソフトウェア費用(SE 費)
・ソフトウェア開発費: 91.2 億円
・ソフトウェア使用料: 246.0 億円
Ø SI サービス費用 : 106.0 億円
Ø オペレーション費用
・外部委託費 : 11.6 億円
Ø その他費用(回線使用料、施設費等)
・回線使用料 : 13.4 億円
・施設費 : 22.6 億円
・環境構築 : 1.2 億円
・工事料等 : 3.6 億円
Ø 消費税 : 52.8 億円”
とし、ソフトウェア使用料(著作権料)として246億/年間を要していることを課題とし、契約上の問題(残債)を提起されています。
検証委員会の最終報告書が物足りなさを感じるのは、システムに運用及び開発に要してきた金額に常識を逸脱しており、その記述が一切ないことです。
付記
① 社会保険オンラインシステム刷新可能性調査 報告書骨子(案)
http://www.sia.go.jp/mhlw/shingi/2005/02/houkokuan.pdf
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